2014年5月5日月曜日

artist vol.4

彼女の話はいつも哲学的でおもしろい。
彼女と語らうと「終わり」というものがこない。
「不思議な魅力を持った女性」を彼女の代名詞として使うけれど、会えばきっと
その魅力に引き込まれていくに違いない。






「自分を高めるために行っていることは?」
ジャンルを問わず文化に触れること。
映画、絵画、美術なんでも。そして学び続けること。
例えばメジャーを持ち歩き、気になったものの寸法を測り続ける。常にアンテナを張っている。
「寸法と素材」これは自分から切り離せないアイテム。
また、展示会や本、新しく会う人、これを月にいくつずつと自分に課す。
すると探すし、人に話しかけるようになる。

実践してみたい。彼女と話しているとそんな事柄にたくさん出会う。
彼女から沸き上がってくるもの、溢れ出てくるものは止めどない。

「落ち込んだ時は?」
「ほおっておく」
すると、「悪化はしない」と笑顔で言い切る。

インテリアコーディネーターとしての時代、それは恐らく「好き」でやっていたこととは少し違うと言う。
葛藤が山ほどありつぶれていった時代。
そんな彼女が「縫い物」に出会い、着物生地のシャツからバッグを試しに作ってみたら好評で
何より自分自身が好きだと感じた。
インテリアは図面を引いても自分で家を建てることはできない。自分で完成させること、それが自分の
望みであるということに気付いた。

ひとつのテーマは次々と彼女の頭の中で進化を遂げる。





「やっててよかったこと、また注目していることは?」
「自分の成長が見えること」
それまでの自分は徒労が多かった。が、やる毎に完成までの道のりが短くなり、アイデアは増え、形が安定
してきた。また、精神的に強くなった。
お金のため、だけではない「天職」と出会えた。

注目していることは「社会貢献」。
珊瑚と編み物の関係について語るある数学者の話にとても感銘を受けたことがきっかけ。
テーマ性を持たせたい。つまり、バッグを作ることを通してできる社会貢献を真剣に考えてみる。
ただ、好きだからだけではなく、日々の中で社会に役立てることを考えてみる。
ゆとりのあるなしに関わらず生活の一部として捉えていきたい。
バッグひとつに意味がある。作り手のわがままではなく、使いやすさや法則性を追求していくこと。
それがすなわち日々の生活に存在するバッグの意味であり、バッグを作るひとつの根拠となる。

社会に生きる。それは社会貢献というものを当たり前と思うこと。意義というものが自分の中だけではなく
自分が存在する空間、環境にあるのだということを彼女の話を聞きながら私は感じた。






「その仕事を通して伝えたいことは?」
そもそも「伝えたい」という自己発信で捉えていない。
自分が作りたい一心でいたものが、ふと人の役に立ったと思えた瞬間に出会えたこと。それは
自分のためだけではなかったことに気付かされた瞬間でもあった。
伝えたい、のではなくつながっていきたい。仮に自分が何か発信しているのだとしたら、
それがどこかで次の発信を生み、またそれがどこかで発信を生み出す。
発信という点がつながってネットワークを作っていく。そのひとつの点であればいい。

終始、こちらが口を挟むまでもなく話は展開してゆく。
自分発信ではないという彼女から発せられた言葉のビームをこちらはむしろ浴びにいっている。
そのビームはエナジードリンクのように活力を与えてくれる。
一度浴びたら定期的に欲しくなる。

尽きない話はお客様の来訪によってようやく終止符を、いえ、小休止を打つことになる。






谷山佳世さんのプロフィール

・1999年 daizuを設立。ヴィヴィッドな色、斬新なテキスタイルデザインに

     インスパイアされ、和生地で服作りを開始
・2002年(株)世界文化社より家庭画報別冊「フェミニンに着る古裂のシャツ」を出版。
    (他2冊共著出版あり。)
・2010年 インテリアファブリックを使って独自のバッグ製作をスタート。










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