2014年5月16日金曜日

artist vol.5

大きな眼と満面の笑み。華やかという言葉がよく似合う。
インタビューにドキドキしながら臨んでくれた彼女。美しさと可愛らしさが同居した存在。

「アーティストとして自分を高めるために心がけていることは?」
「美しいものに触れる。そして美しくないものを避ける」





彼女の言う「美しい」とは、もちろん見た目も大切なことだが、心の美しさであり、態度、所作にも
感じられるもの。
そして美しいと感じるもの、人もそうであるし場所であったり、そんな中に自分の身を置いておきたいと言う。
また、美術館に行き美しいものたちを鑑賞したり、使うものへのこだわりを大切にしている。
そうすることで自分の美への感性というものが研ぎすまされていく。

それが故に彼女の作品には ”美” というものを感じるのだろう。上っ面の美しさではない、奥深い美。

「マイナスオーラからは逃げる」
負の力の影響力というものを感じとる敏感さ。はっきりとした彼女の主張には説得力がある。

恒星の様な人だ。彼女の話を聞いていてそう感じた。
自ら光を放つ。彼女がいるだけでその場所が明るくなる。






そもそも「タルへテリア」という言葉はなじみのない人も多いかも知れない。
コロンビアの伝統工芸で詳しくは彼女のブログを参考されたい。
彼女とタルへテリアの出会いは子供の頃に遡る。いつもお母様の隣で母の作るタルへテリアを眺めていた。
当たり前のようにあるもの。それが社会人になり本格的に学ぶようになる。
「壁にぶち当たった時は?」
「諦める」
天真爛漫な彼女らしいなあと思う言葉の奥には
「今ではない。いつかできることであり、だから違う方法を探してみる」
と、じっくりと向き合う姿勢があった。

そう。壁というものは簡単には越えられない。そこで右往左往するのではなく、焦らずじっくり取り組む。
タルへテリアの真髄なのかも知れない。




「やっててよかったことは?」
「生徒さんとの関わり」
生徒さんが愛おしくてたまらないと言う。自分と同じものを好きだと思ってくれていること。
大事に思っているものに対して一生懸命取り組んでくれていること。教室の外でも活用してくれていること。
そのすべてが嬉しい。喜びをくれる存在だと言う。
ここまで愛される生徒さんたち。
彼女は愛と美に溢れる人である。


「注目していることは?」

古いもの、例えば昔の本の作り方など。
昔のものは丁寧に作られているものが多い。ゆえに、物を大切にする、丁寧な暮らし方をお手本にしている。




「タルへテリアを通して伝えたいことは?」
「教室を通しては、行程から感じられること、作る楽しさや自分の心の動きを感じて欲しい。
また、癒しの時でもあり、集中する時間でもある。それが人に渡った時の喜びも感じて欲しい」
「作品を通しては、・・・特にない!ただ、見てくれた人が何かを感じてくれればいい」

彼女の話は一貫している。
幼い頃から慣れ親しんできたものを愛し続けること。それはタルへテリアに限らず、彼女の持ち物や周りの人
すべてに対して同じである。

美しいというものは愛から生まれるのだなあ、と焦燥とした日々を送る現代の中にはなかなか感じとることの
できない感覚を彼女の中から感じた。



高尾真理さんプロフィール

タルヘテリア・アルバ主宰(タルヘテリア作家)
コロンビア生。
コロンビア人の母の影響で幼少期よりタルヘテリアに興味を持ちました。
1枚の半透明のシートが自分の手によって繊細にも大胆にも変化していく様子に魅せられ、日本でもご紹介したく2002年にコロンビア大使館公認の「タルヘテリア・アルバ」を設立。
個展やデパート・ギャラリーなどでのイベントや展示会の活動を通してタルヘテリアをご紹介しております。
又、教室ではタルヘテリアを楽しく学びながら伝統を継承していけるように励んでいます。

中世から長い時を経て、また、母から娘へと、心を込めて伝わってきた手仕事の工程や作品が、今の私たちの癒しとなることを願っています。



2014年5月5日月曜日

artist vol.4

彼女の話はいつも哲学的でおもしろい。
彼女と語らうと「終わり」というものがこない。
「不思議な魅力を持った女性」を彼女の代名詞として使うけれど、会えばきっと
その魅力に引き込まれていくに違いない。






「自分を高めるために行っていることは?」
ジャンルを問わず文化に触れること。
映画、絵画、美術なんでも。そして学び続けること。
例えばメジャーを持ち歩き、気になったものの寸法を測り続ける。常にアンテナを張っている。
「寸法と素材」これは自分から切り離せないアイテム。
また、展示会や本、新しく会う人、これを月にいくつずつと自分に課す。
すると探すし、人に話しかけるようになる。

実践してみたい。彼女と話しているとそんな事柄にたくさん出会う。
彼女から沸き上がってくるもの、溢れ出てくるものは止めどない。

「落ち込んだ時は?」
「ほおっておく」
すると、「悪化はしない」と笑顔で言い切る。

インテリアコーディネーターとしての時代、それは恐らく「好き」でやっていたこととは少し違うと言う。
葛藤が山ほどありつぶれていった時代。
そんな彼女が「縫い物」に出会い、着物生地のシャツからバッグを試しに作ってみたら好評で
何より自分自身が好きだと感じた。
インテリアは図面を引いても自分で家を建てることはできない。自分で完成させること、それが自分の
望みであるということに気付いた。

ひとつのテーマは次々と彼女の頭の中で進化を遂げる。





「やっててよかったこと、また注目していることは?」
「自分の成長が見えること」
それまでの自分は徒労が多かった。が、やる毎に完成までの道のりが短くなり、アイデアは増え、形が安定
してきた。また、精神的に強くなった。
お金のため、だけではない「天職」と出会えた。

注目していることは「社会貢献」。
珊瑚と編み物の関係について語るある数学者の話にとても感銘を受けたことがきっかけ。
テーマ性を持たせたい。つまり、バッグを作ることを通してできる社会貢献を真剣に考えてみる。
ただ、好きだからだけではなく、日々の中で社会に役立てることを考えてみる。
ゆとりのあるなしに関わらず生活の一部として捉えていきたい。
バッグひとつに意味がある。作り手のわがままではなく、使いやすさや法則性を追求していくこと。
それがすなわち日々の生活に存在するバッグの意味であり、バッグを作るひとつの根拠となる。

社会に生きる。それは社会貢献というものを当たり前と思うこと。意義というものが自分の中だけではなく
自分が存在する空間、環境にあるのだということを彼女の話を聞きながら私は感じた。






「その仕事を通して伝えたいことは?」
そもそも「伝えたい」という自己発信で捉えていない。
自分が作りたい一心でいたものが、ふと人の役に立ったと思えた瞬間に出会えたこと。それは
自分のためだけではなかったことに気付かされた瞬間でもあった。
伝えたい、のではなくつながっていきたい。仮に自分が何か発信しているのだとしたら、
それがどこかで次の発信を生み、またそれがどこかで発信を生み出す。
発信という点がつながってネットワークを作っていく。そのひとつの点であればいい。

終始、こちらが口を挟むまでもなく話は展開してゆく。
自分発信ではないという彼女から発せられた言葉のビームをこちらはむしろ浴びにいっている。
そのビームはエナジードリンクのように活力を与えてくれる。
一度浴びたら定期的に欲しくなる。

尽きない話はお客様の来訪によってようやく終止符を、いえ、小休止を打つことになる。






谷山佳世さんのプロフィール

・1999年 daizuを設立。ヴィヴィッドな色、斬新なテキスタイルデザインに

     インスパイアされ、和生地で服作りを開始
・2002年(株)世界文化社より家庭画報別冊「フェミニンに着る古裂のシャツ」を出版。
    (他2冊共著出版あり。)
・2010年 インテリアファブリックを使って独自のバッグ製作をスタート。